琉球語の美しさ

トーぷ ちュくーリ〈豆腐一切れ〉

子供のときよく聞いたことばである。豆腐を厚さ二、三センチ、長さ五、六センチぐらいに切ったのを重箱につめる。その一切れを、ちュくーリといった。もうすっかり忘れかけていて、豆腐一ちょうのことをいうかもしれないと思って妹に電話すると、一ちょうではなかろうという。やはり重箱につめる程度に切ってあるもののような気がする。クリはクレだからクリヒちャー〈くり板〉という語もあるから榑(くれ)かもしれない。榑は平安朝時代は長さ一尺、幅六寸、厚さ四寸の板材である。板材を切るように切った豆腐の断片をいうようになったにちがいない。土くれ、はしくれなどという語もありそれとも関係ありそうである。「かたまり」だから、おそらくトーぷ ちュくーリはこの系統の語にちがいない。つちくれ、はしくれは、与那嶺方言にはないが、やはりもともとあったにちがいない。豆腐を作るようになったのは後世のことであろうが、その頃までクリはまだよく使用されていて、豆腐の一片をちュくーリといったにちがいない。昨夜ふと気がついたことであった。
▶原稿に(一九八一・一二・九)の記述あり

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