琉球語の美しさ

ティーフッちャき〈相手の肩に手をかける〉

手を相手の肩などに軽くかけることで、子供がよくやる。おとなになるにつれて少なくなるが、ティーフッちャきには子供の頃の親愛の情がこもり、年をますにつれ、またその度数がへるにつれ、動作は心の奥へとしりぞいて行く。幼少の頃のあの動作は、人々の心の中に深く深くもぐって行くように感じられて、ゆかしい。
肩に手をかけたり、ティーサーヂをかるく肩にかけるのはハたーフッちャきといい、紺地の着物をつけた女性が、真紅のサーヂをハたーフッちャきする動作は美しい。
動詞はフッちャきルン。竿にとまっているとんぼを追いはらいながら、芭蕉着をかけるのを、ソーネー フッちャきルンという。「うちかける」ではおきかえることの出来ない言語情緒がただよう。ことばはそれ一つしかない。おきかえは出来ないのである。厳密にいえば、同じ語でも一回一回ちがうのである。渚に寄せる白波の一つ一つは千変万化する。ティーフッちャきにも個人個人の子供のときからの体験が深くまといついている。経験をことにしているので、個人個人によってちがう。

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