琉球語の美しさ
ハたークちワレー<片口笑い>
実際に口の一方でだけは笑えない。もし一方だけで笑うことをこころみたら、それはおそらくゆがんだ顔になって、えがおにはならないであろう。ことばは決して事物そのものの写生や実写ではなく、心でとらえたものである。誰も片口笑いの人々の顔をじっと観察したものはいなかろう。しかし、「片口笑い」という語はいきいきしている。それは満面に笑いがあふれているのではない。笑いがひかえめにあらわれた表情であり、心ひそかに喜んでいる表情がそれとなくあらわれている、つつましやかなえみであり、むしろ魅力のある笑いであり、爆笑、哄笑などとは全くちがい、むしろ沖縄女性の特有な魅力ともいえるのではなかろうか。あヂャーワレー<あざ笑い>などとは全く質のちがう笑いである。
ワレン<笑う>という動詞の活用は、特別な活用をなしている。ワローナ<笑うな>。