琉球語の美しさ
縄・垣
当用漢字が三五年ぶりに改正されて九五字が増えて、来る十月一日に常用漢字として告示されるという。その中に、縄と垣がある。三五年の間、縄と垣は、当用漢字からはずされていたのである。沖縄の人間が、毎日口にし目に見ている縄の字が、今日まで当用漢字からはずされていたことを知っているのは、漢字を真面目に指導している専門家以外にはそう多くはいなかろう。
終戦後、沖縄については日本本土の教科書では教えなかった。地図からは、琉球列島の地図はすっかり削除されていた。沖縄でもまた日本本土についての教材は、いっさい米軍から禁止されていた。私は、この両者の空白は、国民の将来に、ゆゆしい結果をもたらすであろうと歎いた。
沖縄の縄の字が当用漢字にぬけていることは、中央のおえら方の頭に「沖縄」という穴がぽっかりあいていたのではないだろうか。縄の字はただわらなわの「なわ」の表現としてしか、中央のおえら方は考えていなかったのでなかろうか。沖縄戦のあった島、全国の基地の五三%もある島である沖縄のことなどは、頭の中からすっぽりぬけていたような気がする。垣にしても、小学校で学ぶ本県学童にも新垣、石垣の姓を持っている者はざらにいる。中央に住む者の勝手で、漢字をいじくりまわされてはたまったものではない。
▶原稿に(一九八一・九・一三)の記述あり