琉球語の美しさ
ちムグルーセン<気の毒である>
ちムは肝、即ち心、グルーセンは苦しい。自らの肝が苦しいのである。俳優の沼田曜一氏がこういっている。
「昨年末、浦島伝説を追って沖縄を歩いていた私は、あるとき〝肝苦りさ〟ということばを知りました。かわいそうと言わず、心が苦しい。心が痛むとは、なんと優しい表現でしょう。人間愛の原点に触れたような気がしました。そして今も、沖縄の人たちがふさがることのない傷の痛みに深く耐えておられることを知ったのです」
そうして「肝苦りさ座間味島」という現代民話をつくり、舞台化して全国巡演の旅に出、その収益で、沖縄戦で米軍が最初に上陸し、住民が多く自決した座間味島に、平和のための一鍬奉仕農場開設の資金にするというのである。ことばは人の心に触発して光を発する。もとより触発する心があるからでもあるが、ことばがなければ、光は発しない。チムグルサンには、沖縄人の心の深さがおのずとたたえられているような気がする。ことばは、決して心をはなれては存在しない。