琉球語の美しさ

ティーフッちャき<相手の肩に手をかけること>

天河(アマカー)踊りのように、若い男女が向いあって踊る時、女の肩には、赤いティーサーヂ<手ぬぐい>がかけられている。紺地の着物に燃えるように眼にしみる。愛情のしるしに、ティーサーヂを織って贈ったという。肩にティーサーヂなどをかけるのをハたーフッちャきといい、手だけをかけるのをティーフッちャきという。天河踊りなどでも、ニブ<柄杓>を片手に、他の片手は、相手の肩にティーフッちャきをする。その手ぶりが美しい。
南島では、ティーフッちャきの習慣が、生活の中にいきいきとつたわる。
少年の頃、学校への往き通い、いつでも友の肩に手をかけて歩いた。一人で手ぶらで歩くことはすくなかったのである。この習慣が大人になってまでも尾をひくように残っていた。老人たちも久しぶりにあうと、必ずティーフッちャきをしていて、話しこむ。上代に行けば行くほど、ティーフッちャきは、習慣としてより頻繁(ひんぱん)に行われていたのではあるまいか。握手の習慣のない、南島の島人たちは、ティーフッちャきでこまやかな表情をかわして来たにちがいない。肩で愛情を感じ合ったにちがいない。
ティーフッちャきということばを耳にすると、親しいおさな友達の顔が浮かんで来る。

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