琉球語の美しさ
ちンちェイビサー<雲雀の足>
雲雀(ひばり)は夏のまっさかりに、ちンちェイ、ちンちェイと鳴いて飛んでいる。姿が見えなくなるまで空へとんで行く。夏の光が声にこりかたまってはぜているのではないかとうたがわれる。茅原に巣づくりをして、そこで大切にひなをそだてる。子供のとき、よく蜂にさされながら雲雀の巣をさがしまわった。茅のゆれる葉先に羽をはためかしながらおりてくる。その脚をじっとみつめた。その声の感じのようにはりがねのように強靭でほそい。茅の葉先によく調和する足である。方言でやせこけた百姓の細い足をちンちェイビサーという。蒲(く)葵(ば)笠(がさ)をかぶり、あついさなかにやけつくような畑に立っているあの足のかっこうをみると、ふき出したいほど雲雀の足によくにている。これほどの素晴らしい比喩があるのだろうか。
福地唯方氏の話によると、沖縄の空でちンちェイ ちンちェイと鳴いているのは、「雲雀」ではなくて「せっか」だという。
本土で踊るあのどじょうすくいの脚が、ちンちェイビサーなのだ。