琉球語の美しさ
ティンガマ―<かご>
ティンガマーはティル<かご>にガマ<小さいことを意味する指示辞>である。今帰仁方言では、ガマーは単独にも用いられて「うそ」、「いたずら」の意にもなっている。ガマー ハールンは<いじる>。ガマー ゆーナ<うそ言うな>とも用いる。先日、山内昌藤君といっしょに、親泊の竹細工の名工の家を訪ねて、トーバラー<まるいひらたい竹かご。豆をほしたりするのに用いる>を買い求めた。与那嶺にも名細工人がいることを聞いたので、山内君にぜひ記念にほしいと注文しておいた。しばらくしてとどけられたのが、ティンガマーである。以前、母などが肩にかけて、野菜を持ったり、畑へのパンメー<べんとう>の芋を入れて持ったりしていた。竹のいろつやも美しく、鶯の羽のようなうす青色をおびていて、こんなティンガマーをつくる細工人が、まだ自分の部落に健在しているかと、うれしくてたまらなかった。書斎に置いて大切にしている。以前、部落の人々が、ティンガマーを肩にかけて歩いた姿がうかんでなつかしくてたまらない。このティンガマーも、もう生活からすっかり姿をけしたのである。
ひっそり静まった野路をティンガマーをかけた老婆の歩いていた姿もうかぶ。海から魚をいっぱいつってティンガマーに入れて来る釣人の姿も浮ぶ。
▶原稿に(一九八一・七・七)の記述あり