琉球語の美しさ
ゴンガサー<くわず芋の葉>
ゴイはくわず芋、ハサーはものをつつむはっぱのこと。ゴンガサー、ゴイガサー。ゴンガサーはくわず芋の葉でも、田芋の葉でもいう。ゴイの葉は青黒く毒々しい。しかし、ターうムーの葉はうすみどりですきとおっている。かつて、久高島のクボーダキに、湧上元雄氏と二人、西銘シズさんが、神前で祈りをして、神の許可をえて、杜の奥深くまで入れてもらったことがある。昼なお暗い樹のかげでは、くわず芋の葉は毒々しくなく、まるで神女の衣裳のように浅青くすきとおっていてターうムーの葉よりも美しく、仙境のもののように思われた。
ターうムーの浅青い葉をつぼめて清水をいれると白いきよらかな水たまが出来て、水晶の珠のようにころころところがる。田圃で捕った鮒をその中にいれると、その白珠の中で魚鱗をきらめかせた。それを大切にかかえて家へ帰って行くたのしさは、忘れがたい。どろ田のなかから鮒をつかみ、掌の中にしっかりにぎりしめているあの感触と、ゴンガサーの中に魚鱗をきらめかしている美しさは、この世のものとも思えなかった。 ▶原稿に(一九八一・三・六)の記述あり