琉球語の美しさ

ちリールン<連れ立つ>

親愛の情を表面にあらわさないのが沖縄人である。特に女性はそうであった。「男に言いよる」、「いとしい」ということばにあたることばもない。好きだという程度である。二人つれ立つということは人々の注目をあまりにひきすぎた。ちリールンという普通のことばにも、きき耳をそばたてるような魅力があり、男女関係を暗示する力を充分持っている。夫婦がつれ立って歩くということも滅多にないことである。親子、兄弟、姉妹の間でも、外で出会うと、妙に重苦しい気持がわき、あらたまって御正月に親の前にひざまずいて御挨拶をするようなぎこちない気持にさせられる。そういう感情が濃厚に流れている沖縄では、つれということばに対する感覚は異様にこそばゆい。ミーとゥンバーヂリー<夫婦連れ>、ミーとゥンバームヌガッたイ<夫婦の語り合い>には、濃厚に沖縄的な言語情緒がこもっている。

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