琉球語の美しさ

くラーサランくラシー<苦しい暮らし>

くラーサラン<暮らせない>ということばの中には孤島苦が凝結しているように感じられる。海にかこまれてまずしく、やせはてた土地をたがやし、台風にさいなまれて暮らすに暮らせないせつなさがこの方言のくラーサランということばの中に悲しくひびいている。ヒちかランヒちち<苦しい生き方>、くラーサランくラシー<苦しい暮らし>、うマリランうマリ<生まれがいのない生まれかた>というのは幸の少ない島人たちの生きよう生きようともがいている表現である。飢饉(ききん)のことを餓死という。食糧の乏しいこの島である。ゆたかに見えるかに見えて、一旦台風が襲ってくるともう青葉一つ残らない。田畑の作物は素かれて蘇鉄ばかりがそのあつぼったい葉が青色に光り驚気を含んだ赤い実がのこっている。食物は枯れてしまうのである。こういう島の生活は文字通りヒちかランヒちちであり、うマリランうマリであり、くラーサランくラシーである。彼等の生活のぎりぎりの線を表現しつくしていることばである。

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