琉球語の美しさ
シニーガンドーグヌハたーワリー<死龕道具の破片>
今帰仁方言で一番長い単語はシニーガンドーグヌハたーワリーという言葉である。シニーは「死に」ガンドーグは棺を入れる龕道具でありハたーワリーは片破(かたわれ)である。人をののしる最悪の悪口に用いることばである。アクセントは第一音節目がひくく二音節目から最後まで平板である。死ほど人間に忌み嫌われるものはなく死者を運ぶ龕道具は死霊のついたものとして忌み嫌われた。龕道具の片破はしばしば幽霊にばけてあらわれる。
昔、中原馬場の今「忠魂碑」の建っているところでの話である。
「馬場の西端に奇岩が突き出て寂しいところがあった。ある夜、平敷の青年が二人、そこを通ると、松を背にして美しい女が立っていた。二人の若者は此女と共に芝生に坐して話を続けていた。一人の青年は小便をするために中座した。もとのところに帰ろうとして二人の処を見ると、今友達と話している者は舌も長く目玉の飛び出した恐ろしい天蓋のような化物である。或る晩、隣の老婆と二人して、この青年をさとして、遂に短刀をもって彼女を殺すように注意した。男は彼等の教える通りに女を殺した。女は悲鳴をあげて胸から螢火のような青光りのする血をはいた。翌日行って見ると、古い棺の片板の中央に短刀が突き刺さっていた。」
旧羽地村字真喜屋の話、真白い山羊…奇怪な棺の片板 同村字源河にもある。美女…棺片破