琉球語の美しさ
サーヂャイ<白鷺>
白鷺のことをサーヂャイという。まるで別語のようだが、音韻変化によるものである。シラ〔sira〕がサー〔saa〕に変化する例は、saami>しらみ(虱)がある。=sagiはg子音の脱略である。八重山方言にはgの脱略は多いが、沖縄方言にはすくない。しかしnakoosi>nakausi>nakagusiku(仲尾次)ʔeecuɴ>ioki-uɴ>igoki-woɴ(動き居り)などの例もある。
大正の頃まで、与那嶺・諸志の青田の上には、白鷺が無数に群れた。青田の一部を真白くするほど飛んでおりた。戦後は田は畑にかわってしまったので、もう来なくなったと思っていたら、依然としてどこからか、白鷺の群れがやって来て、砂糖黍の上にとまる。餌もないにちがいないが、ずっと親からつたわった習性が残っていて、昔の軌跡を空しく飛んでいるのであろうか。かつて足跡をしるした土地がかわりはててしまって、それを歎󠄀いて鳴いているようでもある。
呉我を越えて、我部祖河への田圃道を歩いていると、古我地一帯の田圃には、それこそ目をおどろかせるほどの白鷺の大群がたかっていた。そのはるか後方に嘉津宇岳がそびえていた。