琉球語の美しさ

ムヌうミちミ〈慎重に〉

家を出るとき、旅に出るとき、父母や祖父母からいつもいわれることは、ムヌうミちミ ヒちーヒきーヨーということであった。ムヌうミちミは直訳するとものを思いつめることであるが、用心深く、慎重にという意である。思いがけぬ事故にあった先祖代々の経験がこういうことばになり、習慣になっている。「気をつけて」ということばよりは、はるかに危険が予想されて感じられる。このことばを思い浮かべるたびに、父母や祖父母の顔までが浮かび、「気をつけて」などという一般のことばでは、とてもおきかえることのできない、ふかぶかとした情愛が感じられる語である。むかしから天災地変に敏感であったわれわれの祖先たちは、生命に対しては極めて用心深かったような気がする。
子供らが家を出、旅に出るときに、われわれは、父母や祖父母のような心遣いをしているだろうか。

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