琉球語の美しさ
ハサー〈食物を包む葉っぱ〉
食物を包む木の葉。サーたーけーガサー〈喬木で、かえでのような葉のかたちをして、ひろいとげがある木のはっぱ〉ムーちーけーガサー〈さんにんの葉っぱ〉
一般にハサーというと、芭蕉の葉をいう。芭蕉の葉は、極めて重宝であった。あぶって、豆腐を包むのにも用い、お祝いのときのシとゥー〈苞、おみやげ〉を包むにも用いた。とくに弁当を包むのには、かっこうのもので、その匂いがかすかに御飯にしみ、味噌や卵焼とこの芭蕉葉のにおいは、遠足のたのしみをまさせた。
ハサーはハサーバーということがある。くきのついたままの葉をいう。夏、木陰に裸でごろ寝するときに用いた。青くすべすべした感触は言いようもなかった。ぐるぐるまいて筒にして、蟬取りにも用いた。木のてっぺんにとまっている蟬をそっと、芭蕉葉の筒でとらえたときのあのたのしみは忘れがたい。何匹も筒の底でもがきながら鳴きさけんでいた。樹蔭をかけめぐったときの少年時代の思い出はたのしい。
われわれが幼少の頃は、学校へ傘をさして行くことは、滅多になかった。雨傘のある家はすくなくて、大降りのときは蓑と蒲葵笠をかぶって行った。小降りのときは大方、ハサーバーをかぶって行った。教室の後ろには、何枚もハサーバーがほうり捨てられてあった。その頃までは、みんなはだしで、教科書と筆入を包んだ風呂敷包みを、腰にゆわえつけて、ガラガラさせながら、片手であるいは両手で、ハサーバーをかざして雨の中を歩いていた。ぬれそぼってもいっこう平気でいた。