琉球語の美しさ
シガーリナミー〈津波〉
潮(しお)干(が)れ波の意か。隠岐や鹿児島では、干潮を「しおかれ」という。全く意外にいノー〈内海〉の潮が干潟になるまでひいてしまう。ふだん海底に沈んでいて見たことのないムとゥー〈岩礁〉までが、干潟にあらわれて、潮は、パー〈外海〉の方へひいてしまう。かつて見たこともない海底がひろがって見える。この異様なしおかれに、人々は不吉を感じたにちがいない。干潟におりてすなどりする気などは、とてもおこらなかったであろう。部落中のものが、不安におそわれてふるえていたのかもしれない。やがて沖の方からうなりをたてて白波がおしよせ、広い干潟をおそい、浜にあれくるい、さらにあギー〈陸〉へとおしよせて来たのであろう。
シガーリナミーということばを考えていると、上代人のあの異様な不吉な干潮を思う。やがてうなりさかまきくるってくる白波の前にひらけた、潮のひいた海底の不気味なさまが浮かぶのである。