琉球語の美しさ
ヂンかエーきー〈源河豪農〉
源河の豪農のことである。羽地や今帰仁で、ちャーミャー〈チャボ〉がときをつげるとき、ヂンかエーきーとうたうと言われた。子供らは、手で胴体をたたき、はばたく真似をしながら、ヂンかエーきーとチャボの鳴き真似を声をはりあげてさけびきそいあった。その動作といい、うたい真似といい、いかにもユーモラスで、好んでやったものである。おそらくは、羽地今帰仁だけではなく、広く国頭全体にひろがっていたにちがいない。
ヂンかエーきーは、源河の田園の中に、まるでお城のような丘の頂上にあった。今は没落して、美しい石垣や、礎石だけが昔のおもかげをしのばせる。百人あまりの農奴がいて、主人は、眼が鋭く、一見して勤怠がわかり、信賞必罰をしたといわれている。
からりと晴れわたった日などに、かん高いチャボが、はばたきをしてときをつげるのがいかにもほこらしげに感じられた。子供らの胸にも豪勢をほこるヂンかエーきーのイメージがありありとうかんで、夢をふくらませていた。