琉球語の美しさ
うヂュール〈薪〉
細枝の薪をいう。母がよく山に行って、うヂュールを頭に乗せて帰った。弟や妹が夕方になると、まるで山羊のように、ヨーネーナち〈宵泣き〉するので、子守りと四名でつれだって山の入口まで、母を迎えに行った。母たちは三、四名、頭に重そうに薪を乗せて山をおりて来た。泣きさけんでいる弟や妹を見ると、うヂュールを投げるように地べたにおろして、ハブサリー〈頭に荷物をのせるために敷く藁をまるく巻いたもの〉をとって、その上に敷いて、弟や妹に乳をふくませている。弟と妹は年子だった。あの母のほっとしたような顔が今も浮ぶ。
うヂュールはどうも古いことばのような気がしていた。大島の古仁屋でもウドゥルという。もっとひろく琉球列島にひろがっているにちがいない。
『全国方言辞典』「おどろ ①雑草いばら等の茂った場所。滋賀県滋賀郡仰木・播磨・愛媛・高知・山口県大島。②小枝の薪。柴。粗朶(そだ)。丹波但馬(物類称呼)・山梨・福井・京都・兵庫・中国。」
『島根県方言辞典』「おどろ ①雑草のうら木(枝・梢)たきつけにする。」
母と同じように、全国方々で、山にのぼってうヂュールを拾い集めた女性がいたにちがいない。私には、うヂュールと母が結びついてはなれない。
▶原稿に(一九八〇・四・一三)の記述あり