琉球語の美しさ
タかスン・ミかスン
春めく、秋めくの「めく」は、春らあしくなる、秋らしくなるの意をあらわす接尾辞である。
沖縄の方言には、鳥の声や、咽喉をならす音、ぐうぐう寝ていびきをかく音、星がぴかぴか光るさまとか、蛇がくさかげににげこんでいくさまとか、いっさいの擬声音、擬態音を動詞にしてしまう、タかスン ミかスンという、まことに重宝軽妙な接尾辞がある。
燕が空中をきって飛び行くのをちッたかスンといい、頭をパチとぶんなぐるのを、パちミかスンというように、音の出るものは、その音を動詞にすることが出来るのである。
昔、師範学校に、日露戦争の勇士で朴訥豪快な屋部軍曹という体操の教師がいたという。唐手の名人でもあった。標準語は十分話せなかった。唐手の指南のとき、「腕にムルシグヮー出して、足をクンパッて、ブッタカシテ、アッタカシて、パチミカスのだ」といっていたという。まことに胸のすくような、活力にみちた絶妙な表現であり、標準語では訳しようもない。それをそのまま、野球や、相撲、レスリングの放送に用いたらどんなものだろうか。ブッタカシテ、アッタカシテ、ワッタカシテ、カンミカシテ、ブンミカシテなどと。