琉球語の美しさ
ブリ<群れ>
群れという言葉は、何かしらひなびていてしかも古典のにおいがある。雁のむれが枯野を飛び立って秋空を渡って行く。草むらのむらもそうであろう。村も同じ語源である。
琉球方言にもムレで構成された語が多い。ブリーブシ<群れ星>は夜空に美しい。ブリーくは草木の群生したところであり、シてィーちブリーくは蘇鉄の群生であり、蘇鉄の赤い実をとって歩き廻った少年時代の思い出をさそう。
ブリーサーサーなどは村人達が大勢集まって、ブー<賦役>にかりたてられて威勢よく働いている様子が眼のあたりにありありと浮ぶし、ブリーニンヂュやブリーシンかも集団的に共同作業をした時の様子を彷彿(ほうふつ)させる。もう農村でこうして部落中が賦役に出て働くこともないので、ブリーニンヂュ、ブリーシンかがブリーサーサーして働いている光景は見られなくなった。この「ブリ」のなかにはいきいきした集団の力さえ私共は感じた。これを表現することばはもうなくなっていくのであろう。活気にみち、じっとしてはおれないあのもりあがってくる気持がブリーサーサーの中にあるのである。