琉球語の美しさ
ヤーバナーシ〈屋話〉
ヂヌ〈地炉〉のそばに坐っていて、子供らはヤーバナーシ〈屋話〉をよくやった。兄弟姉妹の多い家では、兄弟だけで。ときには草刈りをまじえた。友達が来ると、いっしょになって。
「ナーナー ダーガー」〈ナーナーはどこか〉ときくと、「ナかヂュニヤー〈仲宗根屋〉」とはやく答えるのが勝ちである。「ニーニー ダーガー」というと「ニガーミヤー〈根神屋〉」というように、屋号の頭文字を言って、屋号の言いあてっこをするのである。最初は、部落内の屋号だが、隣家の屋号にも及ぶことがあった。
屋号には、役職名のついた、うッちヤー〈掟屋〉、スンとーヤー〈村頭屋〉、ヤマーたイヤー〈山当屋〉、ミヂャーシヤー〈目差屋〉があり、職業名のついたハンヂャーヤー〈鍛冶屋〉、ハンジェーくヤー〈金細工屋〉、セーくヤー〈細工屋〉、などがあり、位階名のついた、シくドゥヌヤー〈筑登之屋〉、ペーちンヤー〈親雲上屋〉、があり、ペーちンヤーには、さらに、フちーマペーちンヤ〈内間親雲上屋〉、くブンペーちンヤー〈窪の親雲上屋〉、ミーペーちンヤー〈新親雲上屋〉、タラーペーちンヤー〈太郎親雲上屋〉、メーヌペーちンヤー〈前の親雲上屋〉、ペーちングヮーヤー〈親雲上小屋〉などがある。童名を付したヂラーヤー〈次郎屋〉、ぷヂラーヤー〈大次郎屋〉、ヂランちュミヤー〈次郎さん屋〉があり、姓を付した、ナかヂャとゥヤー〈仲里屋〉、ユナーミヤー〈与那嶺屋〉、ナかーヂュニヤー〈仲宗根屋〉があり、名を付した、ナビサンヤー〈鍋三屋〉、カマーグローヤー〈蒲五郎屋〉、フシヂローヤー〈牛次郎屋〉、ソータローヤー〈正太郎屋〉があり、綽名でつけた、マイパンちヤー〈尻はじき屋〉、ミークスヤー〈目糞屋〉、うンたマーヤー〈乱暴者をうンタマーという〉がある。
百姓平民にはヤーがつくのに、士族の家には、ヤーをつけずにはっきり区別している。
寄留士族はタナーバル〈棚原〉、ヤマーち〈山内〉、マてーシ〈又吉〉であるが、屋号は、いずれも、タナーバル、ヤマーち、マてーシで、ヤはつけない。タナーバルは分家して、いリンタナーバルがあり、ヤマーちには、ヤマーちヂョー、マちヤマーち、タルヤマーちが分家して、いずれもヤはつかない。呉我山は、ほとんどが、士族の寄留民で、わずかに、もとからいた平民がいるが、平民の屋号だげがヤがついている。
▶原稿に(一九七九・一二・二四)の記述あり