琉球語の美しさ

ミーヂェンヂェン〈眼から火が出る〉

眼から火の出ることをいう。ヂェンヂェンは蛍。まことに妙をえた表現である。眼がくらみ、蛍のようにひかるのがつぎつぎに出る。二十年六月十九日の未明、伊原の道路線上で、迫撃砲の爆風でぶっ倒れた。眼からは蛍火がとんだ。ミーヂェンヂェン くミンとはこのことである。蛍の火が次第に消えるとともに意識はもうろうとして人事不省におちいっていた。はっきり、親妻子のいる北の方を意識し南無阿弥陀仏・南無阿弥陀仏・南無阿弥陀仏と三度となえた。その頃、私は『歎異抄』を読みふけっていたからである。消えて行く蛍光の中から、はっきり、親妻子の姿が浮んだ。
▶原稿に(一九八二・一・一六)の記述あり

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