琉球語の美しさ

ぷンシー〈老婆〉

ぷンシーということばは昭和生れの者にはまったく通じなかろう。ぷンシーは老婆のことである。一般に祖母のことをぱーぱーといったが、ぷンシーはぱーぱーより、よりみじめな老婆を思い浮かべさせるような語感があった。おそらくは、ぱーぱーよりは一層古いことばで、ぱーぱーより前に一般に祖母のことをいっていたのかもしれない。
あちがちャーちャーの前にあったのと対比される。あちは、部落で一番貧しい家に残っていた。ぷンシーもおそらく、貧家で祖母のことをいっていたにちがいない。ぱーぱーにはもののあわれを感じなかったが、ぷンシーは老いさらばえたようなあわれっぽさがあった。よれよれの着物をつけて杖をつきふらふら歩いているかっこうが浮かぶ。ぷンシーという語もまるで、そのような老婆が消え去るように消えて行った。
▶原稿に(一九八一・一二・二二)の記述あり

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