琉球語の美しさ

八重山では、所帯をかぞえるのにキブリが広く用いられている。沖縄でももともとキブシが、同様に用いられたらしく、『琉球国由来記』にあると、宮城信勇氏が例証したことがあった。『沖縄タイムス』五六年十二月二十三日の「今昔ウチナー姓」の中に、東村の川田部落に、部落発祥の七家があり、地元では、これを「川田根謝銘屋七煙」と呼んでいるという記事がある。仁徳天皇が国見をして、里から煙のあがらないのをなげいて、しばらく免税したという仁政の話が思い出されるが、この「七煙」の煙が沖縄ではすっかり消えてしまった最後の名残りをとどめており、消えて行く煙のような哀愁さえ感じさせられる。旧川田部落はダムの底にうもれてしまったが、七煙は、子々孫々に繁昌しつづけて行くにちがいない。遠く山原に土地を求めて、ヤードゥイ〈屋取り〉をつくった当時の七煙の苦労はどんなものであったのであろうか。はじめて小屋がけをして煙を立てた頃のことが思いやられる。

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