琉球語の美しさ

ソーロー<候>

「いらっしゃい」をめンソーレーという。これまで、このソーレーは鎌倉時代のソーロー<候>が琉球方言にはいって来たのだとバスガイドなどが観光客に宣伝している。しかしそれはちょっとおかしい。「我ハ大和ヨリ渡リ来レルサムライニテ候」とはいう。私達など小学校の頃から中学校まで欠席届を候文で書かされた。やっと漢字が書けるようになった頃、小さい手で筆をとって自分でこう欠席届を校長先生に書いたものである。「私コト今日病気ニ付キ欠席仕候、此段御届ケ申シ上ゲ候也。」ところで自分のことをへり下って候というのであって、自分自身について「ワネー メンソールン<私はいらっしゃる>」とはいわない。琉球人が鎌倉時代の言葉をはじめてきいてとりいれた時に、あまりに緊張しすぎて主格を転倒して自分にいうべきところを相手につかってしまったとへりくつをつけたがる方があるかもしれない。「どうぞ私の御手紙を拝見して下さい」みたいに。しかし、ソーローはちゃんと琉球語で解釈がつくのである。八重山ではいらっしゃることをオールンという。奄美へんでもつかう。またおもろにも「おわる」という言葉がたくさん出ている。この「オワル」と「召し」が複合して「召しおわる」が出来、ミシオールン、ンショールン、ショーインとなったので、別に鎌倉時代の候がはいったのではないと思う。

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